これは、遠山 準一(俺)と愛猫ミケの最後の一日の話しだ。 〜〜〜〜〜〜 あれは確か…彼女の鈴音 美琴にプロポーズしようとしていた時だな。 決心がつかず家にいた俺は、ミケ(♀)と遊んでいた。 ミケは、俺が5歳の時に拾って来た三毛猫だ。 最初は妹が出来たみたいで面倒みていたけど、しだいに愚痴を聞いてくれる姉みたいな存在になっていた。 そんな彼女も今年で20歳、人間で言えばおばあちゃんになった。 最近ではお袋達と化け猫になるんじゃないかと話をよくしてた。 そしてその日もミケに相談していた、相談と言っても返事が返ってくる訳でもない、ただミケに聞いて欲しいという一方通行な相談。 だけど今日は違った。 準一「どうしようミケ…今日って決めてたのに、俺…うまく言えるかわからないよ…。」 ??「あんたはこの期に及んでまだそんな事言ってるの!?」 準一「へ?」 つい間抜けな返事をしてしまった。 ??「本当に昔から変わらないわよね。 大事な場面になると急にヘタレになるんだから。」 準一「ミ、ミケ…?」 ミケ「そうよ。やっと喋れる様になったわ、随分と歳を取ってしまったけどね。」 そういって彼女は笑った…様に見える。 準一「何でミケが喋れる…の?」 ミケ「そりゃぁ…化け猫になったからよ。 それよりあんた美琴ちゃんとの約束は?」 準一「それは…」 ミケ「やっぱりね…何がそんなに不安なの?いつもの様に言ってごらん。」 準一「………、俺さ…毎日楽しく過ごせるかが不安なんだよ。 俺は今までミケのおかげで楽しく過ごせた、逆の立場になって、俺は美琴を満足させられるのか……不安なんだ。」 ミケ「なぁんだ…そんな事。」 準一「そんな事ってミケ!俺は本気で…!」 ミケ「準一…私はね…この20年退屈した事はなかったわ。 むしろ充実してた…これはあなたのおかげよ。 それにね、貴方の事をずっと見てきた私が言うのよ。 大丈夫に決まってるじゃない。」 準一「ミケ…。」 ミケ「さぁ行きなさい準一。 貴方の事をずっと見守っているわ。」 そういって彼女は頬を舐めてくれた。 自信が湧いてきた気がする。 準一「ありがとうミケ。 俺、行ってくるよ。まだ話したい事が沢山あるんだ、帰ってきたら話そう。」 ミケ「ええ。いってらっしゃい。」 彼女は優しく微笑んでくれた。 ・・・ とあるカフェテラスの一角。 座っている女性に声を掛ける。 準一「お待たせ美琴。」 美琴「今来たばかりよ。」 微笑んでくれる彼女は、ミケと重なって見えた。 準一「いきなりだけど美琴。 君に伝えたい事があるんだ……」 〜〜〜〜 全てが上手く行き、上機嫌で帰ると、泣きじゃくる家族と冷たくなったミケがいた。 準一「嘘だ…ろ…。」 母「あんたが出かけたあと…眠る様に逝ったわ。」 準一「俺を励ます為に頑張ってくれたのか、ありがとう…ミケ。」 ミケを抱きながら俺は泣いた。 〜〜〜〜〜 あの出来事から数年。 二人の子供ができ家庭も安定してきた。 でも俺はたまに空を見上げる。 今もミケが見守ってくれている気がして。 Message01 完