ミケ「今頃…準一は上手くいって…るかしら…ね。」 彼女は薄れゆく意識の中、楽しかった20年を思い起こす。 ミケ「20年楽しい事ばかりだったわ。 そうね、つまらないかもしれないけど、昔話を聞いて貰えるかしらね。」 そうして彼女は、自分に言い聞かせるように語り始める。 〜〜〜〜〜 そうね、まずは準一との出会いについてからかしらね。 出会いはありきたりな雨の降る寒い日だった、濡れない所に捨てられていたんだけどね…飢えと寒さで死ぬかも…って覚悟した時に準一に拾われたのよね。 親に猛反対されたのに必死に説得してくれたわ。 「自分がしっかり面倒みるから!」って口論して…最後は親が折れてOKして貰って、私は準一に世話して貰う事になった。 生まれてすぐ捨てられたもんだから目もちゃんと開いてなくてね、ご飯なんか全部準一が面倒みてくれた。 最初はお母さん達からは余りいい顔されなかったわ…まぁしばらく経つと撫でたり、遊んで貰ったり…私に対して笑顔を見せてくれた。その時やっと家族に溶けこめた気がしたわ。 それからの日々は早かった…光陰矢の如しとはよく言ったものだわ。 小学生の時は余り友達とは遊ばすにすぐに帰って来て遊んでくれた。 中学生ぐらいから悩みをよく話すようになったわね。好き子の事だったり、友達の事だったり…私は返事してあげられなかったけど、真剣に聞いていると貴方は喜んでくれて…それが嬉しくていつも話しを聞いていたわ。 思えば貴方はこの時から優柔不断だったわね。 高校時代は勉強や塾が忙しくなって遊んでくれる時間が大分短くなったわね。 でも貴方は毎日遊んでくれた。 大学生の時には家族より早く彼女の美琴さんに紹介してくれたわよね…嬉しかったわ、私の事を2人目のお母さんって読んでくれて。 男の子だと思っていたけどしっかり男の人になってたわね。 本当に貴方飼われて良かったし、猫に生まれて良かったと思うわ。 だけどね…一度だけ人間になりたいと思ったのよ。 あれはね…中学生の時だったわ。 貴方が熱を出して寝込んでいた時、お母さんさんがちょっとだけ出かけた時にね。 貴方は辛かったんだろうね。 うわごとのようにずっと誰かの名前を呼んでいたの…私はお母さんを呼んでいると思ったわ。でも違った、貴方が呼んでいてくれたのは私の名前だった。 あの時程貴方の頭を撫でて、抱きしめてあげたいと思った事は無かったわ。本当に貴方の事が愛おしかった。 あら…そろそろ時間みたい…ね。 本当まだ生きて貴方の子供が見たかった…でも…そればっかしは…叶わない…みたい…ね…。 でも…私の…人生に悔いは…ないわ。 これからは…空の上で見守らせて貰うわね。 ばいばい…私の大好きな準一。